STORY歩み、仲間

2022.04.19 自家堆肥の副資材に
作物の旨味も高める竹パウダー

いま、各地で竹害が問題になっていることをご存じでしょうか。割りやすく、曲げやすいことから道具の材料にしたり、タケノコを食べたりと、特に里山で重宝されてきた竹。しかし、担い手不足で手入れが行き届かない、プラスチックに取って代わられた、外国産の安価なタケノコが大量に流通しているなどの理由で用途が激減、各地で著しく繁茂し、森や林の多様性に害を与えているのです。

その一方で、竹には別の有用性があることがわかってきています。例えば竹炭。そして、竹炭を焼く過程で得られる竹酢液(ちくさくえき)。特に竹酢液は野菜の病気を抑え、収穫量を増加させる効果があるといわれています。山神果樹薬草園でも、佐那河内村内の荒れた竹林を目にするにつけ、私たちなりの活かし方はないものかと考えるようになりました。

竹の有用性を調査していくなかで見つけたのが「竹パウダー」です。竹は糖分が多く、自然に乳酸菌が宿っています。パウダー状にした竹を土にまくと、乳酸菌の働きで微生物が増えます。微生物が活発な土壌は団粒構造になり、養分をとどめやすくなるのです。そして幸運にも、徳島県阿南市にある竹林再生会議の代表理事・長池奉成さんから製造方法と活用法教えていただけたことも、私たちが竹パウダーを活用する後押しになりました。

山神果樹薬草園では、精油や果汁を搾り、内皮や袋なども活用したうえで発生する最終残渣を有機堆肥化しています。竹パウダーの話を聞き、堆肥化の副資材として使うことを決めました。村の方に手を入れてよい竹林はないかと尋ねたところ、「だったらウチの林を」と、話が進みました。田んぼのすぐ横にまで迫っている、荒れた竹林です。スペースを切り開きながら、約300本の竹を伐り出しました。竹は粉砕機でパウダー化して保管。搾汁後の最終残渣と混ぜ合わせます。残渣の水分をパウダーが吸収し、堆肥化がしやすくなりました。

竹パウダーは、全国の農業の現場で活用されるようになっていて、作物の旨味や甘みを増したり、栄養性を高めたりすることが報告されています。山神果樹薬草園の研究農園で一番早く収穫期を迎えるのは夏の終わりのすだちです。どのような変化が起こるのか、今から楽しみです。