STORY歩み、仲間

2020.03.30 設計は偶然の出会いから
建物設計 島津臣志さん

佐那河内村のお隣、神山町に「かま屋」「かまパン&ストア」という素敵な食堂・食品店があります。地元の食材をふんだんに使った料理・食品で、地域の気軽な台所を目指しているそうです。山神果樹薬草園を開くにあたって、村内外を見て回っているときに偶然立ち寄ったのですが、おいしさはもちろん、考え方や建物の心地よさにひかれました。それをお店の方に話したところ、紹介してくださったのが島津臣志さんでした。佐那河内村にお住まいの建築家で、かまパン&ストアの設計と、全体の現場監理をされました。そんなご縁に恵まれて、山神果樹薬草園の建物の設計もお願いすることにしました。「母屋があって、離れがあって、納屋があってという、農家を連想させるような」という設計は、島津さんの提案です。

お仕事は徳島市内でされている島津さんですが、お住まいは佐那河内村。古民家を改築し、ご家族と暮らしています。(以下、カッコ内は島津さん)

「以前は徳島市内に住んでいましたが、2015年頃、佐那河内村に引っ越しました。村は車で20分。暮らしやすさは市内とさほど変わりません。もちろん不便なこともありますが、それも村でないとできない、貴重な経験です。社会人になると、新たな人と出会う機会がぐんと減りますが、村では人とのつながりが生まれます。そこにも村暮らしの魅力を感じています」

山神果樹薬草園との仕事には、どのように取り組んでくださったのでしょうか。

「建物の延床面積は約1000㎡あります。けれど、大きなものをドンとひとつ建てるのではなく、木に囲まれた、風景になじんだ建物にしたいと思いました。そこで考えたのが、昔ながらの農家です。敷地内に母屋があって、納屋がある。いくつかの小さい建物が並んでいるイメージです」

建物内には、和柑橘の加工や研究開発をする部屋だけでなく、ファクトリーショップやスタッフ向けの食堂、カフェスペースもあります。

「果実の加工をするとはいえ、『工場』とは呼びたくありませんでした。スタッフ以外の村の人や、村の外から来る人も集まれる、人を迎え入れる所にしたいと思いました。私自身は、とくにテラスとそこへ向かう通路が気に入っています」

山神果樹薬草園にどんなことを期待していますか。

「建物は長い時間をかけて、少しずつ変わっていくものです。山神果樹薬草園と村がどのようにつながり、それが建物にどのように反映されるのかを楽しみにしています。設計のときには、欧米の修道院もイメージしていました。修道院では昔から、礼拝堂のほかにも食堂や図書館、農園など、人々が過ごすいろいろな場所が設けられています。このような点が、山神果樹薬草園の建物のイメージと重なりました」

「建物はでき上がってからがスタートです。山神果樹薬草園でも長く使い続けられるものになるといいな、と思っています」とおっしゃる島津さん。これからも長いおつきあいになることと思います。どうぞよろしくお願いします。