STORY歩み、仲間

2024.09.18 失敗を糧に
有機JAS認証取得に向けて(3)

特別暑かった今年の夏。山神果樹薬草園のスタッフはサマータイムシフトで早朝から草を刈り、カミキリムシが近づかないよう苗木にはネットをかけ続けました。農薬で一気に防除しないのは、ひとえに有機農業を確立するためです。熱い想いで、暑い夏を乗り切りつつあるスタッフですが、実は苦い失敗も経験していました。

山神果樹薬草園と松山油脂では、毎週各部門から全社に向けて業務週報を配信しています。2022年6月には、山神果樹薬草園からこのような週報が配信されました。

「農園チームメンバーと有機JASの取得について意見交換を実施。柚子を含めた苗木について、1年目は無農薬で育てた結果、ほとんどの葉が食害にあう。成長阻害を防ぐため、2年目、3年目は最低限の濃度に調整して農薬を散布。最後の農薬散布時期が2021年6月のため、最短の取得は3年後の2024年7月となる」

ところが、この意見交換後の2022年7月、一部の苗木に有機JAS認証外の農薬を散布していたことがわかりました。原因はスタッフの知識や経験の不足によるところもあります。葉が食べられてしまっては光合成ができず、木が成長できない、実もならない。そんな焦りもあったと思います。しかし、最も大きいのはスタッフ間の情報共有不足であったと、私たちは思い至りました。

山神果樹薬草園が目指しているのは、単に認証を取得することではありません。除草剤や有機JAS認証外の農薬を使わないことで、里山の生物多様性を守ることです。それが自然循環型農業につながるからです。

土壌微生物に活動してもらい、耕しやすさや水もち・水はけ、空気の通りやすさなどの物理性を良好に保つ。害虫の防除は益虫に任せ、ミツバチにも飛び回ってもらう。過剰な施肥をしないことで、木が限られた栄養をしっかり吸収し、十分に生かすようになる。その結果、精油も果汁もたっぷり含んだ柑橘果実を収穫できるようになる。誰もが安心して散策したり、子どもが土遊びをしたり、その場でみかんをもいで食べたりすることができる農園であり続ける。これが私たちの理想です。

山神果樹薬草園には4つのチームがありますが、その弊害、縦割りを取り払うべく、情報共有を密にしています。垣根なく互いの仕事を理解し、よい意味で首を突っ込み、口を出し、作業をともにしています。理想について笑いながら語り合うことも増えました。それらが糧となり、それが来年の夏に大きな実りをもたらしてくれることと、心から楽しみにしています。